学校休みたい…
どうしたらいいんだろう…
不登校の始まりにとまどっているお母さん。今回は、HSCの子どもの不登校について、4つの段階に分けて具体的な対応方法をお話しします。
実は、クラスに2~3人はいるといわれるHSCの子どもたち。周りの様子や音、匂いなどをとても敏感に感じ取る特徴があるため、学校生活での疲れも一般的な子どもの3倍とも言われています。
毎朝、わが子の様子を見ながら胸が締め付けられる思いをしていませんか?「学校に行きたくない」という言葉を聞くたび、どう応えていいのか分からず、途方に暮れてしまう…。そんな気持ち、私もよく分かります。
今回は、HSC(Highly Sensitive Child:高敏感児)の子を持つお母さんとして、不登校への向き合い方をお伝えしていきます。
特に、不登校には段階があり、その段階によって適切な関わり方が変わってくることを知っておくと、子どもへの接し方の道しるべになるはずです。
- HSCの子どもの不登校の4つの段階
- それぞれの段階での具体的な対応方法
- 一般的な不登校とHSCの不登校の違い
- 家庭でできる具体的なサポート方法
※不登校の段階について
不登校の段階は、一般的に7段階で説明されることが多いですが、この記事ではHSCのお子さんの特性を考慮し、より実践的な4段階での整理を採用しています。これは、感覚過敏や環境への敏感さといったHSCならではの特徴を踏まえ、日々の関わり方により焦点を当てた分類方法です。
不登校の4つの段階と対応方法
第1段階:予兆期(行きたくないと言い始める)
朝は体調が悪そう…。「学校に行きたくない」と言い出したら、不登校の最初のサインかもしれません。無理に登校を促すよりも、まずはその気持ちを理解することから始めましょう。
朝、いつもより早く目が覚めました。リビングから聞こえてくる食器の音に、息子が何度もトイレに行く足音が混ざっています。
夜は、なかなか寝付けない様子でした。最近、お気に入りだったカレーも半分くらい残すことが増えてきて…。
小さな変化に気づいたとき、私たち親にできることは、まず様子を見守ることです。
「おなか痛いの?」と声をかけると、うなずく息子。「そっかぁ…じゃあ今日はお休みしようか…」という言葉に、ホッとした表情を見せました。
休む日は特別なことはせず、息子の好きな本棚の前にクッションを置いて、ゆっくりと過ごせる空間を作りました。時々、温かい飲み物を持って様子を見に行くと、マンガを読んでリラックスしている息子の姿が。これが、回復への第一歩になるかもしれません。
大切なのは、子どもが「ここにいていい」と感じられる安全な環境を整えること。好きな場所で、好きなものに囲まれて過ごすことで、少しずつ心が落ち着いていくのを感じられるはずです。
第1段階:予兆期の主な特徴
- 登校前の身体症状が現れ始める
- トイレに何度も通ったりこもったりするようになる
- 「学校に行きたくない」とポツリと言い出す
- だまりこむ・イライラしやすくなる
対応策:お母さんができること
- 子どもの変化に敏感になる
朝起きて家を出るまでの様子、学校から帰ってきた後、寝る前の時間などいつもと違う感覚があれば気にかけてみましょう。
食欲がなくなったり、決まった時間にやっていたオンラインゲームをやらなくなったり…。観察してみると、何かしらの変化があります。
- 無理に起こさず、そっと様子を見守る
「今日は休んでもいいよ」と言って安心感を与えましょう。少しづつ積み重なった疲れやストレスを回復させる時間が必要です。
休んだ日は特別なことをせず、ゆっくり過ごすだけでよいでしょう。
- 好きな場所でゆっくり過ごさせる
子どもの好きな場所や物を日頃から観察し、それらを活用して心地よい環境を整えましょう。
お気に入りのぬいぐるみやおもちゃを置いたり、落ち着ける照明や音楽を取り入れたりすることで、子どもがリラックスして過ごせる安全な空間を作ることができます。
第2段階:不登校初期(休みが増え始める)
登校しない日が増えてきたときは、子どもが家で安心して過ごせるような「居場所づくり」を意識しましょう。
ここ2週間ほど、学校を休む日が徐々に増えてきています。夜になると「明日も行けないかも」と不安そうな表情で私の部屋に来て、小さい頃のように膝の上に座り込むようになりました。
そんなとき、私は息子の髪をそっと撫でながら、「つらかったね」と声をかけます。すると、少しずつ言葉が溢れ出してきます。「給食の時間が怖い」「先生に質問されるのが苦手」…。
具体的な理由を聞き出そうとするのではなく、ただその気持ちに寄り添い、「どんな風に怖かったの?」と、息子のペースで話せるのを待ちます。
夜は一緒に布団に入り、背中をさすってあげることも。だんだんとリラックスした呼吸になっていく息子を感じながら、この接し方で良いのかな、と迷う日々。そんな時、スクールカウンセラーの先生に相談してみることにしました。
「HSCのお子さんは、周りの目が特に気になる年頃になると、不安が強まることがあるんですよ」
専門家の言葉に、少し肩の力が抜けました。今は息子の大きな変化を受け止めながら、必要な支援を見つけていく時期なのかもしれません。不安が強いときは「つらいんだね」と抱きしめると、ほんの少し、息子の体の緊張が解けていくのを感じました。
不登校初期の主な特徴
- 欠席が増え始める
- 不安が強まる時期
- 自己否定的な言葉が増える
- 親への甘えが強くなる
対応策:お母さんができること
- 子どもの気持ちを受け止める
子どもが不安や悩みを抱えているとき、「つらかったね」と共感の言葉をかけ、「どんな気持ち?」と優しく問いかけることで、子どもの心に寄り添いましょう。気持ちを受け止めてもらえる安心感が、子どもの心の支えとなります。
子どもの話をゆっくり聞く時間を作ってあげてくださいね。
- スキンシップを増やす
子どもが不安を感じているときは、優しく抱きしめたり、そばに寄り添って過ごす時間を多くとりましょう。温かいスキンシップを通じて、親子の絆を深め、子どもに安心感を与えることができます。不安な気持ちも和らいでいきます。
- 専門家への相談を検討
子どもの様子が気になる場合は、スクールカウンセラーや発達の専門家に相談することも選択肢の一つです。専門的な知識と経験を持つ方々からアドバイスを得ることで、子どもへのより適切なサポート方法を見つけることができます。
第3段階:不登校継続期(ほとんど学校に行けない)
家から出たがらない場合、焦らずに小さな「できた」を積み重ねることを大切にしましょう。
学校に行けなくなって3ヶ月。息子の部屋からは、深夜までオンラインゲームの音が聞こえてきます。朝はいつも昼過ぎまで眠っていて、「これからどうなるんだろう」という不安が私の心をよぎります。
でも、焦って強く指導するのではなく、まずは息子と一緒に昼ごはんを食べる時間だけは決めることにしました。食事の準備をしていると、少しずつ顔を出すようになってきた息子。リビングの一角に、息子の好きな漫画を置いた本棚とデスクを用意すると、少しずつそこで過ごす時間が増えてきました。
ある日、パソコンで動画を見ている息子が「このプログラミングの講座、面白そう」とつぶやきました。オンラインなら自分のペースで学べる。そんな可能性が見えてきた時、息子の表情が少し明るくなったように感じました。
不登校継続期の主な特徴
- 生活リズムが乱れやすい
- 家の中での居場所を探す
- オンラインゲームや動画を見る時間が増える
- 将来への不安が出てくる
対応策
- 基本的な生活リズムを整える
子どもの心身の健康のために、起床時間をある程度一定にし、家族で一緒に食事をする機会を大切にしましょう。基本的な生活リズムを整えることで、子どもは安定感を得られ、心の余裕も生まれてきます。
- 家での居場所作り
子どもが安心して過ごせるよう、好きな本や漫画を身近に置き、絵を描いたり工作したりできるスペースを確保しましょう。自分の興味や好きなことに取り組める居場所があることで、心が落ち着き、自己表現の機会にもつながります。
- オンライン学習の検討
子どもの興味や関心に応じてオンライン学習を取り入れることも一つの方法です。ただし、学習時間や内容は子どもの負担にならないよう、無理のない範囲で楽しく取り組めるように配慮することが大切です。
第4段階:回復期(少しずつ外に出られるようになる)
外に出たい気持ちが見えたとき、親としては無理せず少しずつサポートしてあげることが大切です。
「お母さん、コンビニにおかし買いに行きたいな」
思いがけない息子の言葉に、私は驚きながらもさりげなく返事をしました。どうやら、YouTubeで知ったおかしが気になったようす。動画がキッカケとなり、少しずつ外の世界への興味が芽生えてきたようです。
最初は夕方の人が少ない時間帯に、近所のコンビニへ二人で出かけました。次第に「今度はドラッグストアにも行ってみようかな」と、息子から提案が出るように。オンラインの学習支援センターの説明会も気になると言い出し、見学に行くことに。
一進一退を繰り返しながらも、息子なりのペースで世界が広がっていくのを感じています。この一歩一歩が、きっと新しい道につながっているはず。そう信じながら、今日も息子と一緒に歩んでいます。
回復期の主な特徴
- コンビニなど、近所への外出を望む
- 少しずつ活動範囲が広がる
- 新しいことにチャレンジしたい気持ちが芽生える
対応策:お母さんができること
- 小さな成功体験を積み重ねる
近所への買い物や、オンラインでの友達とのやりとりなど、小さな目標から始めて成功体験を積み重ねていきましょう。一つひとつの達成感が自信につながり、新しいことにチャレンジする意欲を育てることができます。
- 段階的な外出支援
外出への不安がある場合は、最初は親が一緒に付き添い、短時間で近場から始めるなど、段階的に支援していきましょう。時間や場所を限定することで、子どもは安心して外出にチャレンジでき、少しずつ自信をつけていくことができます。
- 学校以外の学び場の検討
フリースクールや学習支援センターなど、子どもに合った新しい学びの場を検討することも選択肢の一つです。従来の学校とは異なる環境で、個々のペースに合わせた学習や交流ができ、子どもの可能性を広げることができます。
家庭でできる具体的なサポート3つ
不登校の子どもの回復には、学校とのかかわりだけでなく、家庭での取り組みも重要です。お子さまの特性に合わせて、無理のない範囲で生活リズムを整え、安心できる居場所を設けることから始めましょう。そして、段階的に外出の機会を設けるなど、少しずつ活動の幅を広げていくことが効果的です。
1. 居場所作り
- 子どもの好きな空間を確保
- 静かに過ごせる時間を保証
- 感覚刺激を調整(光、音、温度など)
2. 生活リズム作り
- 無理のない範囲で食事時間を決めリズムを整える
- 栄養バランスを意識
- 楽しみながら体を動かす機会を作る
- 眠れないときは一緒に過ごす
2. 心の安全基地になるように
- たくさんスキンシップをとる
- 一緒にいる時間を確保する
- 子どもが求めるタイミングを大切に
- 子どもの話を否定せずに聞く
学校との2つの連携方法
不登校への対応では、学校との連携と並行して、家庭での具体的な取り組みも欠かせません。お子さまの感覚過敏やHSCの特性を踏まえ、個別最適化された支援が大切になります。
担任の先生との関係づくり
担任の先生と定期的に連絡を取り、子どもの特性や家での様子を共有しましょう。必ず伝えてほしいのは3点。
- HSCの特性について
- 具体的な困り感
- 必要な配慮事項
子どもの状況に応じた無理のない課題の提供をお願いすることで、学校と家庭が協力して子どもをサポートできる関係を築くことができます。
保健室の利用について
保健室は子どもにとって安心できる居場所の一つとして活用できます。保健室の先生と良好な関係を築き、必要に応じて別室登校という選択肢を検討することで、子どもの学校生活への不安を和らげることができます。
不登校の子を持つお母さんへ:一人で抱え込まないで
まず、知っておいてほしいこと
不登校は誰のせいでもありません。
「私の育て方が間違っていたのかも…」
「もっと早く気づいていれば…」
そんな風に自分を責めているお母さんも多いのではないでしょうか。でも、それは違います。特にHSCのお子さんの場合、周りには見えない小さなストレスの積み重ねが、大きな疲れとなって表れることがよくあります。
回復には時間がかかります
不登校からの回復は、決してストレートな道のりではありません。良くなったと思っても、また元に戻ってしまうことも。でも、それは後退ではなく、回復に向けた自然なプロセスの一部なんです。
HSCの子どもの不登校の特徴
HSCの子どもの不登校の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか?体に出てくる症状や感覚過敏についてあげてみました。
HSCの子どもによくみられる症状
HSCのお子さんの場合、不登校のサインは身体症状として現れることが多いのが特徴です。
- 登校前の腹痛や頭痛
- 食事への不安(給食時間や食べる場所への不安)
- トイレの問題(学校でのトイレ使用への抵抗)
- 些細な環境の変化への敏感な反応
- 教室の音や光、人の気配に対する過敏さ
感覚過敏との関連
HSCのお子さんは、五感が非常に敏感です。教室の蛍光灯の音、給食の匂い、制服の肌触り…。私たち大人には気にならないような些細な刺激でも、強いストレスとなることがあります。
周囲の理解を得るために
「頑張れば行けるはず」「慣れれば大丈夫」という周りの言葉に、かえって追い詰められてしまうことも。HSCの特性を理解し、子どものペースを尊重することが大切です。
まとめ:不登校の子どもがいるお母さんへのメッセージ
HSCの子どもの不登校は、決して珍しいことではありません。むしろ敏感な心を守るためのサインかもしれません。感覚の繊細さや環境への敏感さは、その子の大切な個性です。
不登校には4つの段階があり、段階に応じた適切な関わり方があります。
学校に行きたくないと言い出したとき
登校しない日が増えたとき
不登校が続き、家から出たがらなくなったとき
少しずつ外に出ようとする兆しが見えたとき
一般的な「がんばれば行ける」というアドバイスはHSCの子どもには逆効果になることも。
段階に応じた適切な関わり方を知り、子どものペースを尊重しながら、一緒に歩んでいきましょう。良いときも悪いときも、あなたの子どもの味方でいることが、最も大切な支援になります。
焦らず、楽しみながら、一歩一歩進んでいきましょう。きっと、お子さんなりの道が開けてくるはずです。
【参考文献】
* 明橋 大二.『HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子』 .1万年堂出版 2018/6/19.232P.ISBN-10 : 4866260343.ISBN-13 : 978-4866260341
※ この記事は、実際のHSCの子を持つ自身の経験をもとに作成しています。個々の状況や症状は異なる場合がありますので、必要に応じて専門家への相談をお勧めします。